番外編:藪にらみユーラシア②
(1)「インカラシ」
NHKニュース「おはよう日本」のアナウンサー、三條雅幸さんをご存知ですか。すらりとした慶應ボーイで、サッカーファン。高いところが苦手?で、同番組の「世界のメディアザッピング」コーナーなどで、ときどき女子アナたちにイジられているイケメン君です。ところでこの方の苗字に、全国の私の同郷者たち(含む高橋克実:直前の朝ドラ、「虎に翼」の兄弟弁護士の兄役)は、いやが応にも釘付けとなっているのでは、と思っています。というのも、私の郷里は新潟県三条市で、このお名前の「三條」というのはその旧字だからです。おそらくはご先祖がここの出(で)?ではないかと(京都の方〔大元?〕かもしれませんが)。
一方「五十嵐(イガラシ、地元音はイカラシ)」さんという名前は、TV番組でも何度も取り上げられて全国区の知名度となりつつありますが、ほぼ例外なくわれらが郷里(三条)の出の一族であるとされ、語源をたどると、市中を流れる川の名前(五十嵐川)が由来なのです。そしてこの川の名前、つまり「イカラシ」は、「インカラシ」(見晴らし台)というアイヌ語由来の地名であるとの説が有力で、そうしてみると、同じ地名は北海道から東北、北陸にかけてかなりの数が存在するようです。以前、北海道登別市の「知里幸恵 銀のしずく記念館」を訪れた際、ラジカセから流れる朗読の中に、「アイヌ神謡集」の「きつねの謡」とおぼしきものの一節(原語読み)があって、この「インカラシ」と「トワトワト」(合いの手)が、何度も何度も繰り返されるのを聞きました。きつねが、見晴らしのよい高いところ(ひょっとして、川を見下ろす場所?)での出来事を語る、という設定なのでしょうか。
更に、これは私の持論なのですが、地名というものは、常に外部から見た場合の「識別記号」として使用されるもの、と考えています。例えば信濃川は、信州から流れてくる(大きな、代表的な)川、と越後側から呼んだ呼称であるのに対し、本家本元(?)の信州では、千曲川と称されます。なお、この「チクマ」の語源は「チクマナ」(鮭のいる川)というアイヌ語である、とする有力説もあります。最近の日本古代史では、縄文人と弥生人はかなりの長期間併存していて(つまり縄文→弥生と単純に入れ替わったのではなく)、いわゆる「アイヌ」も、本州でも広範囲にわたって暮らしていたとされます。
(2)「九州のォ」
一方、西洋語群の例では(乱暴な振り、ですねぇ…)、語尾の「イ」音で土地・出身地を表わす用法が広範囲に見られます。イラン人はイラニ、ドイツはジャーマニー、などなど。この「イ」音、アルファベット表記では主に “i” か “y” が充てられますが、語源としては後者の “y” が元々の発祥(ギリシア語)のようです。
英語の場合、先行する名詞の語尾に付けて「…の」、「…に関し/する」、「…的な」などのニュアンスを出しますが、仏語ですと更に、「そこに」の意味で多用され、“Il y a …”(…がある(〔ナニカが〕そこに…を有する):There is …)などの表現が生み出されました。ちなみに、この文頭の“Il”(ナニカ)は、ドイツ語の “es war …”(…がいた)の “es” 同様、(古くから、)自然の摂理や人間の目に見えない存在による現象を言い表すのに使われる用法です。
ところでこの、出身地を表わす「…の」ですが、どこかで聞いたことがありませんか?そう、寅さんの「オオ、九州のォ。久しぶりじゃねえか…」と同じなんです。つまり、ある土地の出身者を外部者側から呼ぶ際の呼称として(ユーラシアをはるか隔てながらも、)全く同じ発想になっているもの、といえるでしょう。あと、石油ショックの頃のOPECの重鎮、サウジのヤマニ石油相ですが、(メッカ生まれらしいですが、)その名の現地発音は「イャーマニ」で、イエメン出身の一族の末裔ではないでしょうか。
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